「はぁぁぁ! 誰がそんなことを?」
「龍弥とか糸子とか蜜子とか……いろいろな所から?」
「どうしてそこで疑問形なんですか!」

全く意味不明だと呆れながらも、あれっ、と吹雪の言葉を思い返す。

「蜜子って、常磐公爵夫人の蜜子様ですか?」
「ええ。そう言えば……貴女も“有閑マダムのお茶会”メンバーだったわね」
「そんなことまで耳にはいっているのですか?」

乙女が目を点にしていると吹雪がコロコロと笑い始める。

「蜜子と私は幼馴染なの。白状しちゃうと、彼女が私の初恋の相手。あっ、でも、彼女はノーマルだから、完全な私の片想いだったけどね」

「世間って、本当に狭いですね」

しみじみと乙女が言う。

「まぁ、それは言えているわね」

「あっ!」と乙女が声を上げる。

「だからですか?」
「何が?」
「だから、あの茶会の皆様が私の小説を……」

「嗚呼、そのこと」と吹雪が口角を上げる。

「蜜子に小説を渡しているのは私。茶会のメンバーで回し読みしているんだって」

先日も驚いたが、茶会のメンバーは皆、名のある名家の人ばかり……なのに、禁忌と呼ばれる恋愛小説を……回し読み!

アングリと口を開ける乙女を吹雪は可笑しそうに見つめる。