恋し、挑みし、闘へ乙女

「その理由を言ったとして、私にどんな利があるの?」

吹雪が静かに訊ねる。
利? そんなのない。グッと喉を詰まらせる乙女に吹雪が言う。

「興味本位の質問に、答える義務はないわ」
「ちっ違います! どう答えたらいいか迷っただけです」

背筋を伸ばした乙女の真摯な瞳が吹雪を見つめる。

「――私、本当に黄桜編集長には感謝しているんです」

「そう」とひと言吹雪は言いお茶を啜る。

「黄桜編集長もご存じですよね? 国家親衛隊が編集社を……貴女を監視していることに」

「当然」と吹雪が頷く。

「私、厭なんです! 万が一、黄桜編集長が捕まったりしたら、編集社が潰れるようなことがあったら……だから、男装などして目立って欲しくないのです」

堪えきれず乙女の瞳から一粒涙が零れ落ちる。

「あらあら」と吹雪の顔が和らぐ。

「いろいろ心配をかけていたようね」

吹雪がフフッと微笑む。

「そうよね、これじゃあ悪目立ちね。でも……これは私の心を正直に表現した姿なの」

グスッと鼻を鳴らし乙女はハテナ顔になる。

「意味が分かりません」
「当然よね」

手に持つ湯飲みをコトンとテーブルに置き、吹雪はフーッと息を吐き出す。