蛇に睨まれた蛙のように、ミミの迫力ある視線に射貫かれた乙女はピキンと固まる。

こういうのをやぶ蛇というのだろうかと、乙女は機械仕掛けの人形のようにコクコクと不自然な動きで頷く。

「お分かりなら結構です……で、化け物屋敷はどうでした?」

打って変わって興味津々の瞳が乙女を見る。

「それがね……」



ミミから根掘り葉掘り聞かれた数日後、仕事で邸を空けていた綾鷹が四日ぶりに帰宅した。

「おかえ……」の続きの言葉は「乙女!」と抱き付く綾鷹の言葉に遮られる。

「良い子にしていたかい?」

頭上から聞こえる綾鷹の声は相変わらず艶っぽい。
『良い子』とは子供のようだが、綾鷹の心配が見て取れたので乙女は何も言わず素直に頷いた。

乙女の返答に気を良くしたのだろう、綾鷹は「土産がある」とポケットから長方形の箱を取り出し、跳ね上げ式の蓋を開けた。

「ネックレス?」

だが、そう呟いた瞬間、乙女は目を見張った。

確かに、白いベルベット地の上にあるのは乙女が思った通りネックレスだった。だが、金色に輝く鎖中央部分に見たこともない大きな石があった。石の周りには小粒のダイヤが散りばめられていた。