恋し、挑みし、闘へ乙女

「この屋敷だが……今回改めて調査して、新たに分かったことが多々あった」

「それは?」と乙女は興味深げに綾鷹を見上げる。恐怖が去ったようだ。
どうやら彼は乙女の操縦法をすっかり身に付けたようだ。

「君は見取り図を見て何か気付かなかったかい?」

綾鷹が立ち止まる。そして、両手で見取り図を開き乙女の前で広げた。

「――そう言えば……部屋と部屋の間の壁が歪に分厚いところが何カ所かありますね」

「こことここと……」と言いながら乙女が指し示す。

「流石、作家だね。視点が鋭い」

本当に感心しているようだ。

「君の押さえたところに隠し部屋があった」
「えっ、本当ですか?」

好奇心満々の瞳が綾鷹を見つめる。

「案内して下さい! 見たいです」
「そう言うと思って、ちゃんと用意してきた」

何をだろうと乙女が思っていると、綾鷹はズボンのポケットからペンを取り出す。

「これはペンライトだよ」

綾鷹がボタンを押すと辺りが白っぽい光に包まれる。
今まで灯っていたライトと大違いで、小型ながらかなり強力なライトだった。

「そんな良いものがあるなら、もっと早く出して下さればいいのに」

これだけ明るかったら幽霊も出て来られない……と乙女は恨めしげに綾鷹を見上げる。