恋し、挑みし、闘へ乙女

「確かに、我々は出版社“蒼い炎”を監視しているし、君のことも調べた。君から言うと我々は作家活動を邪魔する敵だ」

「でしょう」と乙女は頷く。

「だが、それもこれも国家の安全を守るためだ。それに、前にも言ったと思うが、私は君の活動をイケないものとは思っていない。だから、色眼鏡で私を見ないで欲しい。私という一個人を見て欲しい」

綾鷹の手がポンポンと乙女の頭を叩き、そのままクシャと髪を撫でる。

「まっ、君の気持ちがだんだん私に向いているのは分かっているがね」
「なっ!」

自信満々の綾鷹に、乙女は呆れながらも返す言葉が見当たらない。綾鷹の言う通りだからだ。

「そのことは追々だ。とにかくもう少し屋敷を調べよう」

話を逸らされ乙女はホッと胸を撫で下ろす。

「君は化け物屋敷と言われる所以は知っているかい?」

そんな乙女に綾鷹が突拍子もないことを訊ねる。

「所以とは……恐ろしげな声が聞こえるとか、灯りが見えたとかですか?」
「ああ、そうだ」
「でも、あれってよくある都市伝説みたいなものでは?」

それとも、イケない奴らが屋敷に忍び込んで、悪ふざけをしているのだろうと乙女は思っていた。そう思わないと怖いからだ。