恋し、挑みし、闘へ乙女

「君の思考回路はどういう構造になっているのだろうね。彼が几帳面かどうか知らないが、誰も部屋に入れないのなら自分で掃除をしていたのだろうね」

そうだったと乙女は我に返る。今は掃除云々を気にしている場合ではなかったと真っ赤になる。

綾鷹は乙女の様子を横目で見ながら口元を綻ばせ、「それと……」と言いながら見取り図を指差す。

「このダイニングに隣接して四つの部屋がある」

指された箇所は四つとも小部屋のようだ。

「残っていた文献に、当時この屋敷には当主の鏡卿以外に、女中二名、庭師兼雑務係の男一名、ボーディーガードの男一名が住んでいたとある」

小部屋はその人たちの部屋だったようだ。

「そんなことまで調べがついているのですか?」
「当たり前だろ。国家親衛隊だよ」

ホウと乙女は感嘆の息を吐く。

「私、今初めて国家親衛隊の素晴らしさを実感しました」
「ということは、今まではそう思われていなかったということだね」

揚げ足取りか! 乙女はツッコミたいのをグッと我慢して「仰せの通りです」と殊勝に肯定する。

「だってですね、作家活動を邪魔する存在と認識していたものですからですね……」

グチグチと言い訳をする乙女に綾鷹が言う。