「本当に腹立たしい!」

いきなり怒りだした綾鷹を乙女はポカンと見つめる。

「君の寝姿を見られたのだよ! 全く! 今度あいつに会ったら奴の目の玉をくり抜いてやる」

物騒なことを言い出す綾鷹に乙女はプッ吹き出す。

「そんなことをしたら親衛隊に逮捕されますよ」
「私はそれの長だ。もみ消すことなど容易だ」

公私混同も甚だしいと乙女が呆れていると綾鷹が言う。

「それほど堪らなく嫌だったということだ」

言葉と同時に綾鷹が乙女の手をグイッと引いた。彼の胸に寄りかかるように倒れ込む乙女。その背を綾鷹がシッカリ抱き締める。

「君は私のものだ。だから今後一切、今回のようなことがないよう……閉じ込めてしまおうか!」

ギョッと乙女が綾鷹を見上げる。
怖いぐらいに真剣な目だ。

「――おっ、脅しですか……」
「脅して君が言うことを聞くようなら、いくらでも脅すが?」
「無理ですね」

「そう言うと思った」と綾鷹が深く息を吐き出す。

「だから……君にボディーガードを付けることにした」

ハァァァと乙女は目を剥く。

「私が君を四六時中監視できればいいのだが、不本意だができないからね」
「それ、ムチャクチャ大袈裟じゃないですか?」