身丈の二倍ほどある観音開きの玄関ドアには鍵が掛かっていた。

「国家親衛隊で預かっている」と綾鷹がポケットからスケルトンキーと呼ばれる鍵を取り出す。

持ち手の部分は豪華な薔薇の細工が施されているが、そこから伸びる円筒状の軸先端は平坦で短形な実に単純な鍵だった。

「この屋敷はウォード錠が使われていて、この鍵でないと入れないと言われているのだが……」

綾鷹が苦笑いを浮かべる。

「その鍵ならプロの泥棒でなくても簡単に解錠できそうですね」
「乙女様の仰る通り」

綾鷹は乙女の嫌味にふざけ調子で応じながら鍵穴に鍵を差し入れた。

「だが、報告では無理矢理こじ開けた跡はなかったらしい」
「ということはスペアーキーがあるということですか?」
「スペアーキーは鏡卿の死と共に紛失したと聞いている。今以て見つかっていない」

だったら誰がスペアーキーを持っているというのだろう? 益々分からないと乙女は頭を振る。

カチャンと解錠すると綾鷹はキーを抜きドアを開ける。あの日と同じように、少し埃っぽい匂いが乙女の鼻先を掠める。

屋敷の中は昼間だというのに薄暗かった。厚いカーテンが引かれているからだろう。

「この前は二階の一室で目覚めたのだったね」