恋し、挑みし、闘へ乙女

意味が分からない、というように乙女が首を左右に振る。

「出る杭は打たれる。時代を先取りしすぎると、それがどんなに正しいことであろうと、時代がそれに追い付くまで排除され続ける」

綾鷹の意見を聞いていた乙女はハッと目を見開く。

「――それは、私が正しいことをしている、という意味ですか?」
「その答えは、今、ここで口にしない」

それでも乙女には分かった。綾鷹が乙女の行動を肯定してくれているのが。
嬉しい! 乙女は素直にそう思った。

「故に、取り敢えず推理小説でも書いてみたら、と提案した次第だ」

なるほどねぇと乙女は頷き、アッと瞳を輝かせる。

「だったら今回の拐かし、これを題材に一連の事件を……」
「小説にするのはいいが、無茶な取材はするんじゃないよ」

速攻で綾鷹から釘を刺される。

「了解です」

あまりに軽い乙女の返事に綾鷹は不安そうな顔をする。

「大丈夫ですよ。どんな時も綾鷹様が守ってくれるのでしょう?」

先手必勝とばかりに乙女が言う。

「確かにね」綾鷹が笑う。

「なら、決して目の届かぬところへは行かないこと。どこに行くのも國光の送迎でだ。分かったね」

「――その代わり……」と乙女がニヤリと笑う。