恋し、挑みし、闘へ乙女

そして、満面に笑みを浮かべ、「どうぞ」と自分のスプーンを乙女の口元に差し出し「はい、あーん」と言う。

思いがけない成り行きに、乙女は思わず口を開く。そこにスプーンが入る。途端に口いっぱいに極上の甘味が広がる。

「美味しい!」

言葉が乙女の口を突いて出る。

「――じゃなくて! 何ですか『あーん』って、子供でもあるまいし!」

すぐさま我に返り、赤面しながら文句を言う。

「何って君が食べたいと言ったから食べさせてあげたんだよ。ほら、もう一口、あーん」

また口を開きそうになり、乙女は「おっと」と身を後ろに引く。

「もう結構です!」
「そう?」

綾鷹は残念そうに、スプーンに乗る餡子を自分の口に入れる。
全く! 乙女はそんな綾鷹を無視してパフェをひと匙口に入れ目を剥く。

「これ、何ですか! 今まで食したパフェの中でベスト3に入るほど美味しいです」

スプーンが止まらない、と黙々と口を動かし始める。すっかりご機嫌だ。

「それはよかった」

意外だが、綾鷹も甘い物はいける口のようだ。

「ところで一つ疑問なのですが」
「疑問とは?」

興味深そうに綾鷹が訊ねる。