恋し、挑みし、闘へ乙女

「凄く美味しかった、と彼女が言ったので、十箱ほど土産に包んで欲しい」

パァと店員の顔が明るく光る。

「畏まりました。綺麗にラッピングしておきます! お帰りの時、お渡し致します」

キリリと敬礼すると、店員は勢い良く部屋を出て行く。

「――私、美味しいとはひと言も言っていませんよ」
「顔を見れば分かる。あれは美味しいという顔だった」

その通りだが、先程からこんな風に言い当てられてばかりで乙女は面白くない。

「十も私、食べられませんよ」

乙女が口を尖らせ言うと、「家人への土産だ」と綾鷹が笑って答える。
ミミや紅子の喜ぶ顔が目に浮かび、単純だが「絶対、好きですよアレ!」と乙女の機嫌が直る。

「さあ、アイスが溶けないうちに食べよう。君はどちらがいい?」
「あっ、この間、あんみつを頂いたのでパフェにします」

そう言いながらも、この間のは普通のだったしな、と綾鷹の方に持っていかれる至極のあんみつを乙女は名残惜しそうに見つめていると、それに気付いた綾鷹がニッと笑う。

「これもちょっと食べてみる?」
「えっ、いいのですか!」

至極真面目な手つきで綾鷹があんみつをひと匙すくう。