恋し、挑みし、闘へ乙女

乙女の顔が真っ赤に上気する。
初めてだった。小説を読まれ恥ずかしいと思ったのは……。

それは乙女が恋愛未経験者だと綾鷹が知っているからとか、それなのに恋愛小説を書いているとか、という理由もだが、それ以上に身の内を見られた感が凄くしたからだ。

以前『読んだ』と言われたときは、仕事の一環で、だと思ったからそれほど乙女も気にしなかった。

だが……心の奥に仕舞ってある理想郷のような世界を言い当てられてしまっては、恥ずかしさから穴を掘って埋まってしまいたい心境だった。

「そんなに照れなくても……」と綾鷹が乙女に手を伸ばそうとしたとき、「失礼します」と声が聞こえ障子がスーッと開く。

先程の店員だ。
綾鷹がチッと小さく舌打ちするのが乙女に聞こえた。

「お待たせ致しました」

店員が手早く注文の品をテーブルに並べていく。
至極と付くだけあって豪華で美味しそうだ。乙女の喉がゴクンとなる。

「注文の品は以上でしょうか?」

「ああ」と綾鷹が頷くと、「追加のご注文がございましたら、そちらのベルでお知らせ下さい」と店員が頭を下げる。

「あっ、そうだ」と店員が障子に手を掛けたところで、「先程のチョコ」と綾鷹が声を掛ける。