恋し、挑みし、闘へ乙女

「綾鷹様こそ詐欺師になれますね。ところで、国家親衛隊は本当になりたかったお仕事ですか?」

唐突な質問に綾鷹は一瞬だけ目を見開くが、「君はどうして作家活動を続けるの?」と逆に質問返しをされる。

「どうしてって言われても……ただ書きたいと思ったから……」
「だったら私も、なりたかったような、そうでなかったような……」

ムムッと横目で綾鷹を小睨みし、意地悪だ、と頬を膨らませる。

だって言えると思う? 禁書と言われる古い恋愛小説を幾冊も読み、胸をときめかせただの、愛し愛され結ばれる、そんな男女が培う愛が世界に溢れてこそ平和で温かな世を作るのだと信じているだの……言えない。

「私が思うに……」と黙り込む乙女の代わりに綾鷹が口を開く。

「君はこの国を愛に溢れる国にしたいのでは? 君の小説の中心にあるのはいつも“愛”だ。愛至上主義と言おうか……そのために君は小説を書き続けている。違う?」

乙女は目を見開き、瀕死の金魚のように口をパクパクさせる。

「どどどどどうして……」
「分かったか、だろ?」

コクコクと乙女が何度も頷く。

「言ったじゃないか、君の小説を読んだって。それも全作ね」