「命の惜しい龍弥は乙女を逃がすことにより、自分も助かろうとしたのだね」
「それだけじゃないですよ」
「それ以外に?」
「彼は守銭奴だから自分のミスにしたくなかったみたいです」

乙女の説明で「あいつらしい」と綾鷹が笑う。

「要するに、返金したくなくてたまたま君を探しに来た国家親衛隊が君を見つけたことにした、ということか」

「そういうことです。それでですね……」と乙女が上目遣いで綾鷹を見る。

「元チンピラの荒立龍弥のことですが、今回の件は許してやってくれませんか? というより、他の人にはご内密にして頂けませんか?」

やはり約束は守らなければ、と乙女が願い出る。

「君はあの男に惚れたのか!」

綾鷹がギロリと乙女を睨む。

「だからぁ、どうしてそうなるのですか! 約束なんです。助けてくれたときの……」

「約束は守るためにある」と力説する乙女に綾鷹が「うーん」と唸る。

「分かった。今回は乙女を助けてくれたということで大目にみよう。ただし、金輪際、あいつと関わるな、分かったな!」

乙女の鼻先に人差し指を突き立て念を押すように綾鷹が言う。

「それは勿論……というより会う機会もないと思うし」
「その言葉、忘れるな!」