恋し、挑みし、闘へ乙女

「あんたさぁ、来週、見合いするんだってな」

――どうして見合いのことまで！　益々気味が悪い。でも、何か変だ！
そう思った途端、乙女の頭がスーッと冷え、気持ちが落ち着く。

「もしそうだとして、それが貴方に何か関係あるの？」

男は、おとなしそうな乙女がまさか言い返すとは思ってもいなかったようだ。一瞬、瞳を大きく見開いた。

だが、それは本当に一瞬だけだった。丸い目が徐々にへの字になりゲラゲラと笑い出した。

「おもしれえ。お嬢ちゃん、意外に骨があるんだな」

男の口がニヤリと歪む。

「気に入った。俺の女にしてやるよ」

乙女の肩に置いた手を首に回して乙女を引き寄せた。

「なっ何んですって！　穢らわしい。その汚い手をお退けなさい！」

ゾゾッと肌が粟立つのを感じて乙女が叫ぶ。

「厭だね！　お前さんみたいな気の強い女、俺、好きなんだよ」

男は放すどころか、益々腕に力を入れる。

「貴方なんかに好かれても迷惑なだけです！」

反抗しながらも、こんなことなら護身術の授業をサボらず真面目に受けておくんだったと乙女は後悔する。

だが、後悔先に立たずとはこのことだ。
絶体絶命！　乙女は白々と明けてきた東の空を見つめ、涙目になる。