恋し、挑みし、闘へ乙女

「お前と話してはいけないと言われていないし、お前に親切にしてはいけないとも言われていない。要するに、見張っていれば何をしていてもいいということだ」

どんな道理だと思いながら、この男は本当にお金にシビアな男だな、と乙女は妙な感心をする。

「で、ここはどこなの?」
「化け物屋敷」

龍弥がクッと唇の端を上げる。

「――もしかしたら夜露卿のお屋敷?」
「流石、梅大路綾鷹の見合い相手だ。よく知っているな」

近々偵察に来るつもりだったが、とほくそ笑み、まさかこんな形で来るとは思ってもいなかった、ともう一度辺りを見回し、豪華な調度品の数々もそれなら頷けると独り言ちる。

「それにしても、また、どうしてこんなところに?」

「俺が連れてきた訳じゃない」と龍弥が答える。

「俺もこんなおどろおどろしいところ、ご免だ。だが……」

だが……どうしたというのだろう?
乙女の疑問に答えるように、龍弥が言う。

「蘭丸が乙女嬢を運び込んだのがここだったって訳」

ここなら見つからないと思ったから?
益々増える疑問に乙女は頭がパンクしそうになる。

「乙女嬢さんよぉ、顔が青いぞ。横になれ。今は何も分からない。考えても無駄だ。それより薬が切れるまで眠った方がいい」

確かに、と思い乙女は素直に横になる。それを眺めながら龍弥が苦笑する。

「お前って、本当、警戒心ないな。いくら言われたからって男の前で寝転がるなよ……襲われるぞ」