恋し、挑みし、闘へ乙女

「喉渇いているだろ?」

――確かに、どんな薬を飲まされたのか知らないがカラカラだ。だが、と乙女は訝しげに龍弥を見る。

「それにもまた、変な薬なんて入っていないわよね?」

「お前なぁ」と龍弥が呆れた顔をする。

「薬を盛られる前に疑え! 見知らぬ奴に飲み食い勧められて安易に口にするな。こんなの子供でも知ってることだ。これには入ってない。だから安心して飲め」

「――そんなこと言ったって茶屋だよ。飲み食いするのが当たり前の場所じゃない!」

理不尽に叱られ乙女は逆ギレする。

「――ん? 嗚呼、まぁ、それもそうか」

龍弥が頭を掻き掻き「すまん」と素直に謝る。それにちょっと気を良くして、乙女が身を起こす。そして、「ねぇ」と言いながら「どうして親切なの?」と訊く。

龍弥は「惚れたから」と笑いながら答える。

「また冗談ばっかり!」
「まぁ、そう思っておけ」
「ふーん。それよりいいの? こんなにペラペラ雇い主のことを話しても」

「仲間じゃないの?」と疑問に思いながら訊くと龍弥が肩を竦める。

「さっきも言ったが、俺はお前を見張っていろと頼まれただけだ。与えられた金はその分だけ」

そう言いながら乙女の目前にあるローテーブルに龍弥が腰を下ろす。