【短編】手のひらを、太陽に…

 そして気が付くと、志音は病院の5階に足を運んでいた。

 葵という女性のことが、気になってしまったのだ。





 ただ512号室を通り過ぎるだけで、葵には会わないつもりでいたのだが、5階のロビーへ行くとそこに葵はいた。

 しかも葵は美しい黒髪の女性とソファーに座って話をしていた。

 その女性は葵と顔がよく似ていた。きっと葵の姉だろう…志音は察した。



「あ!あなた朝の…。」
 すぐに志音は葵に気付かれてしまった。


「あ…たまたま通り過ぎただけで…。じゃ!」
と、志音はその場から立ち去ろうとした。


「たまたまでもいいから、待ってて。絶対よ!」
 念を押されて、志音は渋々近くの椅子に座った。