しばらく志音は一人、窓から白くて大きな綿菓子のような雲が漂う真っ青な空をボーッと眺めていたが、急に今朝の女性、葵の言葉が頭をよぎった。


“あなたが死んだら! 私が悲しい。”

 その言葉と同時に、その時の葵の表情も頭にはっきりと浮かんだ。

 ―あの表情は…、見ず知らずの他人に見せる表情なのか? まるで私のこと心配してるように見えた…。
 しかも、私にあんなこと言われて、少しも動じることなく…。

 …意味わかんないし!何でそんなに見ず知らずの他人のことを心配できるの?何なんだ、あの人は!






 しばらく、葵のことが志音の頭から離れなかった。