「これが、事実ね。」

 桜井は持っていた書類を一通り読み終え、志音に尋ねた。


「そうだよっ…!」

 志音は苛立たしく返事をした。

「ごめんね! 何回も同じこと思い出させて。でもこれはちゃんとやっておかないといけなくてね。」

 桜井は申し訳なさそうに言った。




 ―あーあ、これだからお役所の人は嫌だね。決まり決まりってさ。


 志音は心の中でそうつぶやいた。



「警察でのお父さんの事情聴取でも、言っていることはほぼ同じだった。間違いはないようね?」


 桜井は志音の顔を覗き込むように言った。志音は嫌な顔をし、そっぽを向いた。




「明後日退院になるけど、具合はどう?」


 桜井の笑顔の問い掛けにも、志音はそっぽを向いたまま
「べつに。」
と返すだけだった。







 桜井は30分ほどで志音の病室を出ていった。