刑務所の面会室を出ると、すぐそこのソファーに桜井は座っていた。志音は桜井に涙を見られるのが悔しくて、すぐに右腕でゴシゴシと涙をこすった。右腕を下ろして桜井を見ると、桜井はいつもの笑顔を浮かべていた。今日の志音にはその顔が何故だかとてもあたたかく感じた。

 二人は刑務所を出て、最寄り駅まで歩いた。
 志音は桜井が何か話し掛けてくることを待ったが、桜井が一向に話す気配がないので、しびれを切らして話を切り出した。

「…最初から、わかってたんですよね?父が私を刺していないこと。」

 志音はじっと桜井の横顔を見た。

 桜井は真っ直ぐ前を見て答えた。

「最初から、ではないわ。いろいろ調べてみて、確信できたことよ。」