「それにさ、私はあんたに追い打ちをかけるために電話でちょっときつい事言ったけど、私は姉だから否応なく彼女の支えにならなきゃいけなかった。でも、他人なら逃げてたかもしれない。葵のことを“辛そうね、可哀相ね”って他人事言ってたかもしれない。だから、洸が逃げたくなっても引き止める権利、本当はなかった…。だけどさ、私は葵の姉だから、葵のこと考えたらつい…。悪かったね。」

 公英は洸に向かって頭を下げた。

「そんなこと言うなよ。お前が後押ししてくれなかったら葵を喜ばせられなかったし、きっとこの世に中途半端な気持ちを残しながら去っていったと思う。こちらこそ、感謝してる。きっと葵もそう思ってるさ!」

 洸は少し笑っていた。

「そうね!洸も、…葵もぉー!!私に感謝しなさいっ!」

 公英は「葵もぉー!!」の部分を宙に向かってそこにいるかもしれない葵の魂に問いかけた。しんとした病院の廊下に響いた。

「なんだよそれ。偉そうに!」

 洸は笑った。