志音は無我夢中で葵の病室を探し当てた。

 1つのベッドを囲むようにして、公英と葵の両親らしき人がたたずみ、ベッドで寝ているであろう葵の顔のほうを見つめていた。

 志音は病室に入れず、入り口につっ立っていた。葵の姿を見るのが怖かったのだ。
 しばらくして葵の母親らしき人がすすり泣きをしながら志音の横を通って病室を出ていった。後を追うように父親らしき人も出ていく。

「…志音。そこにいたの。」

 公英がようやく志音に気付いた。

「葵の顔、見てあげて。…いい顔してる。」

 志音は恐る恐るベッドに近づいた。