「葵が退院して、すぐまた入院したとき、あっただろ?あの時…不謹慎だけど、俺、葵が…死んでしまうんじゃないかって思ったら、怖くなった。葵を失いたくないって思った。その時にはもう、葵が、好きだった。どうしようもないくらいに…。」

 葵は、頬を赤らめた。洸に告白されたことが、例えようのないくらい嬉しかった。

「あの時、俺が駆け付けたら、葵はものすごいへこんでたよな。俺、そんな生気のない葵を見て、本当に怖くなって、一生懸命励ました。」

「それがあの言葉だったのね。…私、あの言葉で支えられたんだよ。」

 洸は苦笑いを浮かべた。

「長く生きてほしいから、俺を置いていってほしくはないから一生懸命だった。でも、その思いは自分の勝手な思いだった。きっと、今日生きていてくれたら明日も、明日も生きていてくれたら1週間後も、1ヶ月後も、1年後もって、どんどん自分の期待だけが膨らんで、葵がいつか死んだとき、傷ついてこの先どうして生きていったらいいかわからなくなりそうで怖かった。だから俺は葵を好きな気持ちをあきらめようと思った。俺は自分の心に嘘をついて、自分の心を傷つかないように守ろうとしてたんだ。…人を生かそうと支えるふりしておいて、本当は死んだときのことばかり考えて、葵から逃げようとした。俺は最低なんだ。」

 洸はうつむいた。両手の拳が震えていた。