そう言われたとたん、志音の目は見開き、桜井の顔を見た。
 何言ってんの?と言うより先に桜井は言葉を発した。

「あ、今すぐって言っているわけじゃないの。志音ちゃんの心の準備ができたらでいいわ。」

「ふざけないで!今更会ってどうしろと言うの?!」

「志音ちゃんにとって、たった一人の、お父さんでしょ?」

 志音は一瞬言葉につかえた。

「…あんなの、親じゃない!!そんな話をしにきたんだったら帰って!!もうあなたに会うのはうんざり!!」

 志音は勢い良く立ち上がった。座っていた椅子が大きな音を立てて倒れた。

 桜井は驚くほど落ち着いていた。志音がそう言うことがわかっていたようだった。


「考えておいてね。気が変わったら言って。待ってるわ。」

 桜井は笑顔で言い、ゆっくり立ち上り、部屋を出ていった。



 志音は確かめるように、腹部の傷の部分を服の上から触った。