「でも、明日で私たち、お別れよ。」

「いいえ!ここで終わりにしないわよ。」

 そう言って、葵はメモ帳とペンを取り出した。
 メモ帳に何やら書くと、それを切り離して志音に渡した。

「はいこれ!私のケータイとメアド。」

「それで、私が連絡すると思ってるの?」

「必ずする!」

 志音は葵の断言ぶりに呆れて笑った。

「どっから来るの? その自信。」

 笑いながら葵に訪ねる。

「自分を信じてるから! じゃなきゃ、自分に申し訳ない。」

 葵は満面の笑みで言った。

「…わかった。」
 志音は葵の押しに負けた。






 ―私にはこのとき、葵は人生に何の迷いもなく、まっすぐに生きていると思っていた。いや、実際このときはまっすぐに生きていたのかもしれない。
 けど、この時葵が抱えているとても大きなものなど、私は知るはずもなかった。