【短編】手のひらを、太陽に…

「じゃあ、志音はなんで5階に来たの?」

 それは葵に嫌味を言った志音にとって痛い質問だった。

「さ…散歩よ!」

 志音は慌ててそう言い繕った。

「ふぅん…。散歩なら他の階に行けばよかったんじゃない?5階に行けば私がいるって、知ってたはずでしょ?」

 葵は少し挑発的に志音に言った。

「あなたは…部屋にいると思った。」

 志音はなおも言い訳をした。

 葵は少し笑い
「まぁいいや。こうやって志音と話がしたかった。志音にどう思われようと、これは本当の気持ち。」
と、志音をまっすぐ見た。志音はどうも葵のこの疑いのない視線に弱いと感じた。