【短編】手のひらを、太陽に…

 葵は志音を見て嬉しそうに尋ねた。
「まだ、名前聞いてなかった。」

「志音。用事はそれだけ?」
 対して志音は冷たく言った。

「改めて、葵です。よろしく!」

 葵は笑顔で志音に右手を差し出した。志音はそれを無視して去ろうとした。


「ねぇ!歳はいくつ? 私は二十歳(はたち)。…同い年ではなさそうね。」

 志音の行く手を阻むように、葵は質問した。

「17だけど。」

「17かぁ…青春真っ盛りだね! 学校は行ってる? 楽しい?」

 志音は葵の質問にいい加減苛々した。姉妹の仲睦まじい姿が志音の脳裏をよぎる。

「ねぇ! 何がしたいの? 不幸な私への同情? 相談相手気取り?」

「ただ、志音と仲良くなりたい。それだけ。」

 葵はまっすぐ志音の目を見て答えた。

 その目は嘘偽りのない純粋な目に見えた。

 その態度が余計志音は苛立ち
「じゃあ入院中の暇つぶし?」
と嫌味を言ってしまった。


 葵は間を置くように、深くため息をつき、話した。