―ここを飛べば 苦しみから抜け出せる…





 暑い夏 ある晴れた日の早朝。


 志音(しおん)は自分の入院している東京のある病院の屋上の手すりに手を乗せ、下を見下ろしていた。

 8階建ての屋上からすぐ下を見下ろすと、コンクリートの道端に咲く向日葵が、まだ涼しい朝の風に揺れてまるで志音に手を振っているようだった。


 しばらく志音はその向日葵たちを眺めていた。















 数分後、志音は意を決したかのように表情が固くなり、ひょいと手すりを乗り越えようとした。




 その時だった。