祖父母と優里、そして優愛は居間に集まってただ鎮座していた。ただ一人、優愛だけはまだ泣き続けていたのだが。

「ヒック…グス…」

「何時までも泣くな!こっちの方が泣きたいよ!」

落ち着いたとは言え、やはり優里の怒りはまだ鎮まっていない。泣けば怒られ、更に泣く。その悪循環から抜け出せず、重苦しい空気がのしかかっていた。

「優里、少し落ち着きな。優愛ももう泣かないの」

祖母に諭され、数分の時間をかけて何とか落ち着こうと努力をする。涙が出ないようにクッと目に力を入れ、無理矢理泣き止んだ。

「ごめんなさい…」

優愛には何が悪かったのか全くもって理解出来ていなかったが、怒られたという事はなにかいけない事をしたのだろう。そう思い優愛は謝った。

「……」

優里からの返事はない。ただタバコを吸うだけだ。

「ほら優里、お前も謝りな」

幼い優愛には分からなかったことだが、今回の件に関しては優里に非があると感じた祖母はそう促した。

「あーはいはいわかりました全部全部ぜんっぶ!自分が悪かったですごめんなさいすみませんでした申し訳ございませんでした。これでいい?」

その言葉からは自分が悪かったなどの謝罪の心は一切感じられなかった。

「なんだいその態度は!」

「謝ったじゃん!こっちが100%悪かった。それで良いんでしょ!?」

この口論が始まるとなかなか終わらない。その様子にずっと黙っていた祖父が遂に口を開いた。

「いい加減にしろ!今すぐ出て行け!」

「あーそうですかそれなら出てってやるよこんな家!」

「やぁだぁ!行かないでぇ!」

その言葉に優愛はまた涙した。自分の前から母親がいなくなる。それを考えただけで悲しくなった優愛は優里の手を握って懇願した。

「うるさい!」

その手を振り払い優里は二階に行ってしまった。きっと鞄を取りに行ったのだろう。本格的にまずいと悟った優愛は急いで後を追いかけた。