それから数ヶ月経ち、優里は何とか部屋の外に出てたまに家事などをやっていた。今は夕飯を作り食べているところだ。

「部屋から出てきたと思ったら今度はあんなに食べて…」

そう言われても食べてないといられないのだ。不安や焦燥感が食べている間だけは和らぐ気がしたから。食べないとずっと不安。お腹いっぱいにならないと眠れない。そんな優里の心など理解できない祖父母は、その度に責めた。働く事も出来ず、ただ部屋に閉じ篭り、出てきたと思えば暴食に走る。優愛と遊ぶなんてことはここ最近全く出来ていなかった。

「もうこれでご飯3杯目だよ?」

この時の優里の感覚は狂っていた。どの程度の量が適正なのかわからず、優愛にも通常の数倍はあるであろう食べ物を食べさせていた。米も1回に5、6合は炊いている。

「ママ〜、お腹いっぱい」

しかしまだ優愛は子供だ。最初のうちは勿論食べ切れるはずはなかった。

「そんなにママの作るご飯が不味いの!?だったらもう食べなくていい!」

しかし今の優里にはそんな当たり前の感覚がない。お菓子ばかり与えていたせいか優愛はぽっちゃり体型で食べる時は沢山食べる。だからたまに食べきれないと言う時はご飯が不味いからだと決めつけていたのだ。

「違う!本当にお腹いっぱいなの!」

「ご飯が勿体ないでしょう!?そんな我が儘言うならもうあんたのご飯なんて絶対に作らないから!」

このやりとりを祖父母はどんな気持ちで見ていたのだろうか。自分ばかり責めて優愛の味方ばかりする2人に耐えきれず、箸を投げた。

「だったらもう死ねばいいね!さようなら!」

そう言い階段を上がって部屋に入った。慌てて優愛が自分を追う足音が聞こえる。

「マ〜マ〜っ!ごめんなさいぃ!」

泣きながら謝る優愛を見て一瞬動きが止まる。しかし一度火がついた心はなかなか消化できなかった。

「あんたが我が儘ばかり言うからだよ!良いよねあんたはじじにもばばにも甘やかされてるんだから!ほんっと憎らしい。父親に似て人を嫌な気持ちにさせる天才だね!」

「…ひっく…うっく…」

何も言わず泣きじゃくる優愛を見ていると、怒りが鎮まるどころか更にヒートアップする。

「泣けば許されると思ってんじゃないよ!布団がお前の汚い涙で汚れるでしょ!?全く…あんたがお腹いっぱいだとか嘘吐かないで我が儘言わず食べてれば怒る事もなかったのに。良い?怒るのってすごく疲れるし労力使うの。お願いだから怒らせないで」

優愛からしてみれば本当にお腹いっぱいで食べきれなかっただけなのだが、それを聞く耳持たない優里を見て諦めたのか、もう一度ごめんなさいと謝ってきた。

「今度我が儘言ったらぶっ殺すよ?」

自分でも酷いことを言っているのは理解していた。それでも湧き出てくる感情に歯止めが利かず次から次へと言葉が出てくる。後からそんな自分に自己嫌悪するのは目に見えているのに、それを止める術を優里は持っていなかった。