「はーい!ではお外で遊びましょう!」

そんな保育園の先生の声に元気良く返事する子供たち。そして優愛の手を引っ張る二つの手があった。

「優愛ちゃん!早く行こ!」

1人はツインテールのリサちゃん。もう1人がポニーテールのリカちゃん。双子の姉妹だ。優愛はこの2人ととても仲が良かった。逆に言えばこの2人以外とは馴染めずにいたということだが。

それはともかく、親の事情によりよく休んでいた優愛に対して分け隔てなく接してくれる2人の存在は心の支えになっていた。そして2人を追いかけて外に走る。

「ねえねえ、またあの花見つけよ!」

あの花とは、紫色の花弁を付けた蜜の吸える野草のことだ。誰もが知っているツツジの花だがこの時の優愛たちは花の名前など知りはしない。

「あっちの柵の所に咲いてたよ!」

「よーし行ってみよー!」

幼い3人は元気良くそこまで駆ける。それを見ていた近くの子供たちが優愛の悪口を言っていた事は多分優愛以外の2人は知らないだろう。

泣きそうになるが他人の前で泣くことが嫌いだった優愛はぐっと堪え笑顔で蜜を吸っている2人に駆け寄った。

「私にも吸わせてー!」

「はい!あげる!」

仲良く1本ずつ分け合ってその蜜を吸う。美味しいねと言いながら3人は給食の時間まで終始笑いあっていた。