東京の食品会社に入社して5年、やっと俺の案が採用された。いつまでも同じ味、同じ食感のあれ、非常食の定番、乾パンだ。俺たちチームは研究の末、理想の乾パンを完成させた。それはコンソメ味!食べてもなぜか飽きないコンソメ味だ!
案が採用されたその日の夜。お祝いでみんなでバーにカクテルと洒落こんだ帰り、グダクダになって川沿いを歩いていると、足が縺れてガードレールに乗り出してしまった。アルコールで肉が柔らかく仕上がるように、俺の身体も見事なほどにイナバウアーして頭から川に落ちた。
なす統べなく水底に沈んでいくが、限界になった息がぼんやりとする頭を引き戻した。酒で粕漬けになった脳みそで無理やり手足を動かして水面に向かった。
「ぷはっ!」
やっと息が出来た。
また沈みかけるが、俺の酔いと酸欠でガンガン痛む頭を押し退けて、本能が岸へ行けと叫ぶ声に従う。
這いずり出るとやっと少し落ち着いてきたようだ。