「あっ」

慌てて顔を伏せると、村瀬さんが耳もとで言った。

「仙道さんのプロフィール写真、ずいぶん暗い印象なんですよ。髪だけでも少し雰囲気を変えて撮り直しませんか?」

それは、私を宥めるようなとても優しい声だった。

けれど、私は…。

「嫌です」

小さく一言呟いた。

「どうしてですか?」

「……嫌だからです」

目を伏せたままそう答えると、突然、村瀬さんにぽっペたを両手で挟まれて、無理やり顔を上げさせられた。

「なら、俺の目を見て、ちゃんと嫌な理由を説明してみろよ」

突然、村瀬さんが豹変した。
凄くビックリしたけれど、その目はとても真剣で、私のことを思ってのことだと伝わってくる。

けれども、私はずっと長い間抱えてきた想いを、上手く言葉にすることはできなかった。

涙かジワリと込み上げてきたその時、美容院の扉がガチャと開いた。

「コラコラ、零士! 何、女の子イジメてんだよ」

中から美容師さんが、慌てて飛び出してきた。
彼の出現により村瀬さんの手が緩み私は解放された。

「とにかく、中に入りなよ」

私は村瀬さんと共に、店の奥にあるスタッフルームへと通された。

「初めまして。この店のオーナーをしている葵です。零士とは大学の同級生なんだ。どうぞ宜しくね」

美容師さんはにっこりと笑いながら、『葉山葵』と書かれた名刺を私に差し出した。

村瀬さんに引き続き、この人もまたレベルの高いイケメンだった。