「な、何ですか…?」

隣で笑い出した村瀬さんをジロリと見る。

「いや…だって。婚活パーティーに来て会社の説明会に連れて行かれる人、初めて見たからさ。ホント面白いよな、仙道さんって」

「え……面白い? 私がですか?」

「うん、仙道さんは面白いよ。いつも想像の斜め上を行くから見てて飽きないよ」

「そ、そうですか」

私は村瀬さんの言葉がちょっと嬉しかった。
“面白い”なんて、初めて言われたから。

褒め言葉じゃないのかもしれないけど、“面白くない”と思われるよりも全然いい。

心が少し軽くなった。


「あの、村瀬さん……この格好って、やっぱり婚活パーティーには地味でしたかね」

さすがに、マズかったかなと思えてきた。
きっと皆なは、もっと華やかな格好で来るだろうし。

「でも、華やかな服じゃ、相手にガッカリさせちゃう気がして、プレッシャーなんでしょ?」

「そう…ですね」

「じゃあ、仕方ないじゃん」

「そう……なんですけど」

何だか今日はいつも以上にモヤモヤするのだ。

いつまでもこのままじゃいけない気がして。
やっぱり、変わらなきゃと思う。


「早く自分に自信が持てるようになるといいね」

ふと見上げると、目を細めた村瀬さんが私に優しく微笑んでいた。



…………



そして、いよいよパーティーがスタートした。

始めは男女別れて円卓に座らせられたけれど、後から自由になるらしい。

よく婚活パーティーであるような一人ずつ席を交代していく形式の自己紹介はないと、村瀬さんからは聞いている。

あったら私は来ていなかったのだけど。

とにかく今日は、優しそうで話しやすそうな人を見つけ、10分以上会話するのが私の目標だ。

大丈夫。
昔は男の人とだって緊張せずに喋れたんだから。

あんなにイケメンの村瀬さんにも“面白い”って言ってもらえたんだから。

自分に暗示をかけるように心の中で呟いていると、司会者の女性がマイクの前にやって来た。


「それでは、お待たせしました。この後はご自由に、どうぞ皆様でお楽しみ下さい」

女性スタッフの言葉で、一斉に皆なが立ち上がった。

私も席を立ち、中央にあるブュッフェコーナーへと向かった。

高級ホテルだけあって、凄く豪華な料理が並んでいる。
まあ、腹が減っては戦は出来ぬだよね。

なんて考えながら、サーモンのマリネをお皿に取っていると、横から村瀬さんが声をかけてきた。

「仙道さん。何やってるんですか? 皆さん、とっくに始めてますよ」

「え?」

ハッとして振り返ると、どの円卓も男女のペアが出来上がっていた。