「剣道の試合じゃないんだから」

笑いながら、村瀬さんが私を見た。
その瞬間、キュンと胸が高鳴った。

凄い……。
イケメンが笑うと、こんなにも破壊力があるのか。
ドキドキして一気に顔が熱くなる。

でも、不思議と手の震えは起きていない。
村瀬さんの視線も怖くない。

うん。
なんか、大丈夫かも知れない。

ホッとする私に、村瀬さんがこう口にした。

「こちらこそ、ちょっと強引過ぎました。しかも、傷つけるようなことまで言ってすいません。このまま退会されちゃうかなって実は心配してました。反省しています」

「いえ。私の方こそ、せっかくアドバイスして下さったのに、失礼な態度ばかりですいませんでした」

今度はちゃんと目を見て言えた。
人の顔をまともに見たのなんていつぶりだろう。

「じゃあ……このままここで婚活を続ける意思はあるんですね?」

村瀬さんの質問に私はしっかりと答える。

「はい。あります。結婚したいです」

「分かりました。一緒に頑張りましょう」

「はい!」

こうして、私の“婚活”は再スタートを切ったのだった。


……


とは言え、現実はなかなか厳しかった。
こちらからお見合いを申し込んでも、会う前に断られてしまうというパターンが続いた。

入会から一カ月が経つけれど、まだ誰にも会っていない。

まあ、無理もない。
村瀬さんにあれだけ“暗い”とダメ出しされたプロフィール写真で勝負しているのだから。

同じくらい野暮ったい男性を選んだつもりだったけど、同族嫌悪みたいなことなのだろうか。

どちらにしても、土俵にも上がらせてもらえないのは、さすがにちょっとショックだった。


そんな中、村瀬さんからパーティーイベントに誘われた。

「今度の土曜日なんですが、仙道さんも参加してみませんか?」

思わず『はい』と頷いてしまったけれど。
土曜日が近づくにつれて、だんだん胃が痛くなってきた。

「大丈夫です。私もフォローしますから」

今は村瀬さんだけが頼りだった。