「アホか、できるわけねぇだろ。そんなバカでかい声で叫んでたら聞こえるよ。俺の家、あそこだから」
そう言って後ろをむいた九条くんは、防波堤の奥にある1軒の白い家を指さした。
あの白くて正方形の、古い家ばかりの中でひときわ目立つ真新しい家。
「え……あの家って…」
つい最近完成したばかりの、新築じゃないか。
というか……あれはうちのとなりの家だ!
「ちょっと前に引っ越してきたんだよ」
「引っ越してきた!?」
こんなに近くにいたのに…。
なんで私は九条くんの存在に気づかなかったんだ…。
まさか九条くんが、うちのとなりに住んでいたなんて。


