きみだけに、この歌を歌うよ





「菜々、おーい…菜々?聞いてる?」

「あっ、ごめんね!ちょっとぼーっとしてた……あはは」



聞かないようにしているのに。

傷つくとわかっていながら、つい聞き耳を立ててしまう自分が嫌になる。



愁と杏里ちゃんが自転車でふたり乗りをすることは、私と付き合っているころにも何度かあった。

杏里ちゃんがむりやり愁の後ろに乗るんだ。

それがちょっと嫌だった。