「でも母さんは死んじまったから、俺にはもう歌う意味なんてねぇんだよ」
ぽつりと放たれた声から、九条くんの悲しみがひしひしと伝わってくる。
計り知れないほどの、深淵のような悲しみが。
私も悲しい。
九条くんの歌がもう聞けないんだって思うと、悲しくて仕方がなかった。
「でも、私は……九条くんの歌、もっともっと聴きたいって思ってるよ。私ね……実は、九条くんが歌った雨色をね、1日10回くらい聴いてるの」
10回、なんていったけどほんとはもっと聴いてる。
夕飯を食べてお風呂に入って、それから寝るまでの4時間くらいのあいだ。
繰り返し、ずーっと聴いてるときもある。


