きみだけに、この歌を歌うよ





「けど……もう歌わないよ」

「えっ……?どうして?治る病気なのに?」

「だって、もう歌う意味ねぇから」



歌う意味がないっていうのは、どういうこと?

お母さんが亡くなってしまったから?

動揺を隠せないでいると、九条くんがぽつりぽつり話しはじめた。



「俺が歌をはじめたきっかけは、母さんなんだ。6歳のときにはじめてカラオケに言って、母さんがいつも口ずさんでた歌を歌ってみたらすげぇ喜んでさ……」



お母さんを喜ばせたい一心で、歌を歌うようになった。

そう教えてくれた九条くんは、亡くなってしまったお母さんを探すように空を見あげていた。