きみだけに、この歌を歌うよ





「ありがとな」



九条くんの大きな手が、また私の頭の上でぽんぽん、とはねる。

私の頭を撫でてくれたことだけではなくて、私を見つめる目も、声も優しかった。

その優しい声を聞いていると、九条くんの歌声が恋しくなった。



「ねぇ……九条くん」

「ん?」

「もう……本当に、歌えないの?」



だから私は、聞いてしまった。

あんまり触れない方がいい話題かな、とは思っていたけれど。



歌えないって言っても、リハビリをすれば治ることだってあると思う。

『今は』歌えないってだけで、時が経てば『また』歌えるようになるんじゃないかって私は思っているから。