きみだけに、この歌を歌うよ





なにやってんだ、私のバカ。

九条くんの心の傷をえぐるようなことを、聞こうとしてしまうなんて…。



九条くんの歌が聞けなくなるのは嫌だ。

あの優しい歌声が、大好きだったから。

だけど、歌いたくても歌えない九条くんはもっと辛いだろう。

泣きたいくらいに辛いだろうな。



「あはは……だよね、ごめん…」

「まぁ、いいけど?たまには童心にかえるってのも。勝負してみる?」



そう言って私に視線を返した九条くんは、口元にうっすらと笑みを含んでいた。