きみだけに、この歌を歌うよ





「菜々っ、大丈夫か?」

「あ……愁。うん、大丈夫だよ」



体育の先生が持ってきてくれたティッシュを鼻の穴につめこんで、ニヤッと笑いかけてみたけれど。

ぜったいにうまく笑えてない。



「先生が保健室行ってこいってさ。一緒に行こうか?」



壁にもたれて座り込む私のまえにしゃがんだ愁が、行こうと手を差し出してくる。

そのとき、ニコッと笑った愁の左頬が少しだけ赤いことに気がついた。



「あれ……その顔、どうしたの?」



まるで、誰かに殴られたみたいだ。



「あぁ、これ?杏里のことで、親父に杏里ちゃんに何言ったんだ!今の会社給料いいんだぞ!社長にクビにされたらどうするんだ!ってぶん殴られた」