「晴れ渡った空とさざめく波。そんなみなれた景色が…」 メロディに合わせて、九条くんの歌声が小さく聞こえてきた。 「え……九条くん?もしかして歌ってる……?ちょっと待って、歌めっちゃ上手っ!?」 聞こえてきたのは、あたりいったいを包みこむような、包容力のある、優しい歌声。 それは思わず、でかいひとりごとを口にしてしまうほど上手だった。