きみだけに、この歌を歌うよ





愁とは何度もカラオケに行った。

その時に歌った曲を歌えば、私と付き合っていたころの気持ちを、思い出してくれるかもしれない。



あの時は楽しかったなって。

やっぱり俺には、菜々しかいないなって。



そんなふうに思い出してくれる、なんてことがあるのかも?



「なぁ……聞いてる?」

「うんっ、聞いてるよ!わかった、行こう九条くん!」



よし。

これは拷問ではなくて、チャンスととらえよう!



愁に近づけるチャンス。

愁の気持ちをとりもどすチャンスなんだ。



「よかった。じゃあ、当日にまた道案内頼むな。どこにカラオケ店があるか知らねぇから」

「オッケー、任せて!」