きみだけに、この歌を歌うよ





九条くんからふいっと視線をはずす。

穏やかに波を打つ海にむいて、立ったままの九条くんのとなりに座りこんだ。



「……ない、って言ったらウソになるかな」



九条くんは私のとなりに座り込み、うつ向けていた顔を覗きこんできた。



「また例の元カレか?」

「ちょっと違うの……。元カレの好きな人。バカにされて悔しくて…」

「へぇ。だからそんな暗い顔してんのか」