きみだけに、この歌を歌うよ




それに浜辺にいたのは九条くんだけではなくて、波打ち際で遊んでいる小さな子供と、その子供を見守るお母さん。

防波堤に座ってなにかを話している、私と同じ年ころの女の子3人組の姿もあった。



愁に言えない不満をぶちまけたいけど…。

人がちらほらいる中で、バカヤローだなんて叫べない。



吐き出すことのできない怒りをぶつけるように、海にむかって思いきり石を投げつけた。

ジャボン、と石が海に沈む音がした。



石は海にのまれるように消えてなくなったけど、愁への怒りは消えてくれなかった。

むしろ、イライラが増したようにすら思えた。