きみだけに、この歌を歌うよ

「じゃあいいじゃねぇか、それで。お前の元カレに好きな人がいたとしても無理に諦めなくていいじゃん」

「……え？」



九条くんが私を励ますようなことを急に言うもんだから、びっくりしてしまったせいか涙がピタリと止まった。



涙でぼやけていた視界がクリアになって。

九条くんがはじめて、私に笑いかけてくれていることに気づいた。

口の端をほんの少しだけつりあげて、それはそれは不器用な笑顔だった。