目を強くこすってもこすっても、涙は止まってくれなくて。 九条くんが呆れたように小さくため息を吐くから、小さな子供みたいにぼろぼろ涙を流していることが途端に恥ずかしくなった。 「ほんとごめん……。気にしないでっ…」 「いや、気にするだろ…」 いちだんと深いため息をこぼした九条くんは、鍵盤の蓋を閉めて立ちあがった。 イスに座る九条くんを見おろしていたのに、逆転して見あげる形になった。 「ほんっとにお前……呆れるくらい未練タラタラだなぁ」