きみだけに、この歌を歌うよ





音楽室の中からそう問いかけてきた九条くんは、ピアノの前に座ったりなんかして。

なんの躊躇もなく鍵盤の蓋を持ちあげた。



「へぇっ!九条くん、ピアノも弾けるの?」



いけないことだってわかってたけど…。

九条くんのピアノの音色、ちょっと聴いてみたいかも。

窓枠に手をかけた私は、誰かに見られてないかな?と思いながらも、音楽室の中に入った。



グランドピアノのそばまでいって、九条くんの手元を覗きこんでみる。

骨ばった両手は、すでに鍵盤の上に置かれていた。